野菜ジュースは本物の野菜の代わりになる?

スーパーマーケットには、様々な種類の野菜ジュースが並び「身体に良い」イメージを与えてくれます。食事からも不足しがちな野菜ですが、野菜ジュースで補おうという方も多いでしょう。多くの品種が含まれているだけで栄養が豊富なのか、液体で摂取するだけで野菜と同じだけの栄養成分が得られるのか、本当のところはどうなのでしょう? 作り方からその工程で変化していく野菜ジュースの栄養素などについて、ご説明していきます。

目次

「濃縮還元」ってよく書いてあるけど、ソレってどんなこと?

野菜ジュースの栄養を説明する前に、その製造方法について少しお話しします。野菜が国外から輸入される際には、効率よくコンテナに積載するために「熱濃縮」と呼ばれる方法で体積を減らしてから日本へ運ばれます。

「濃縮還元」という言葉をご存じでしょうか? これは、濃縮されたジュースに後から水分を加えて元の状態に戻すことを指します。フルーツジュースで「果汁100%」と表示されているものによく見かける表記です。実は、野菜ジュースでも同じ工程が行われています。

ここで気になるのは、「熱を加えると栄養素が壊れてしまうのでは?」という点です。確かにその通りです。加熱処理によって水溶性のビタミンCや食物繊維は減少してしまいます。しかし、脂溶性のビタミンAやE、そしてミネラル群は残ります。

野菜をそのまま食べれば摂取できる栄養素も、ジュースに加工する過程で失われることが多いのです。とはいえ、これで「野菜ジュースを飲む意味がない」と結論付けるのは早計です。残された栄養素もあり、日々の野菜不足を補う一助にはなります。

甘く飲みやすい野菜ジュースは砂糖に注意!

野菜ジュースには、最近では美味しいものが多く、野菜以外にも季節のフルーツとの組み合わせで健康を意識しつつ楽しめる商品が増えています。しかし、これらも野菜ジュースとしてカウントしてよいのでしょうか。

商品のラベルに「砂糖・保存料不使用」と書かれているものは、その通りの成分で作られていますが、記載がないものについては、飲みやすさを追求するために砂糖が使用されていることが多いです。成分表をよく確認することが大切です。健康を意識して野菜ジュースを飲む場合、糖分の摂取は避けたいものです。

さらに、砂糖が含まれていなくても、野菜汁とフルーツ汁の割合が変わることで果糖の量が増えることがあります。果糖も糖分の一種なので、摂りすぎには注意が必要です。炭水化物の項目を確認し、その含有量をチェックすることが判断基準の一つです。

例えば、糖尿病患者の方が健康のために野菜ジュースを飲んだ場合、そのジュースに多量の糖分が含まれていると、症状を悪化させるリスクがあります。そのため、成分表の確認は欠かせません。

1日350gの野菜摂取をどう捉えるか

厚生労働省が定めている「1日の野菜摂取量は350g」という目標値ですが、野菜を350g食べるのと、350mlの野菜ジュースを飲むのでは、摂取できる栄養素にかなり違いがあり、やはり野菜ジュースは、補助的なものとして摂取する方が良いといえます。

野菜汁が100%だったとしても、失われた栄養素が多く、食品添加物によってビタミンなどを足しているケースもあり、パッケージに記載された製法と栄養成分表にどのような表記がされているか、チェックする必要があるでしょう。

【結論】野菜を摂取できない状況においてプラスとなる要素はあるが、栄養価はグッと下がる

野菜ジュースが、同じ分量の野菜を食べるよりも多くの栄養素を失っていること、栄養素をあとから添加していること、これらのケースから想像よりも効果的な栄養摂取ができないという印象を持たれた方も多いと思います。

その作り方から、十分な栄養価が摂取できない事実はありますが、まったく意味がないわけではなく、あくまで野菜摂取の補助的な存在として考えたほうが良いのかもしれません。

もちろん、製法にこだわってつくられた商品もありますし、旬のフルーツと組合わせることをテーマとして販売されている商品も存在しています。私たち消費者が何を目的として野菜ジュースを手に取るのか、そのパッケージから情報をキチンと読み取る必要があると思います。

「ダメ」なものではなく、そういう存在だと捉えておいた方が良いのでしょうね。

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この記事を書いた人

田中 稔也のアバター 田中 稔也 管理栄養士

国家資格
管理栄養士・調理師
その他資格
糖尿病療養指導士・食育指導士

経歴
公益社団法人福岡県栄養士会筑後支部 山門分会長 (任期:2007年~2009年)

メディア出演
FMたんとにてラジオ番組放送中79.3MHz (毎週水曜12:27~)

高校卒業後、料理人を志し地元の和食店にて修行。栄養学に興味を持ち始め平岡栄養士専門学校へ入学。調理師、栄養士免許取得後、特別養護老人ホームの調理現場責任者に従事。2年の現場経験の後、独学で管理栄養士国家試験を受験し一発合格。その後、内科専門病院にて病棟担当の管理栄養士として糖尿病を主とした生活習慣病患者の栄養指導を毎月100件以上行い糖尿病療養指導士取得。院内ではNSTチームメンバーとして活動。2006年〜2008年、福岡県筑後地区栄養士会分会長就任。任期満了後、退任。
現在は健康食に特化した配食事業の会社を2010年から経営。地域の皆さまへ「本当に安心・安全な食を提供し、健康で豊かな生活を送るお手伝いをしたい」との想いで日々仕事に励んでいます。
また、これまでの経験を活かし管理栄養士として、食に関連した生活習慣病の改善、美容、ダイエット等の健康情報を発信をしています。 

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